書き続ける!住職の平常心日記

静岡県にある曹洞宗のお寺、正太寺の住職が物欲との戦いを公開します。

宗務所日記

今日は年に一度の寺族研修会。座学と出かけての研修、隔年で開催していて、今年は出かける番です。各教区の寺族会長さんと、当宗務所での寺族会担当である人権主事さんの相談の末、トヨタ自動車の工場見学を柱とすることになりました。


本当はハイブリッド車の工場を見たかったのですが、諸般の事情で断念し、今回はクラウンなどを生産している工場の見学です。


一番すごいなと思ったのは、映像でしか見られなかったのですが、ロボットによる溶接作業。プレスされて運ばれてくる車体の各パーツを、無数のロボットアームがガシガシと溶接していくのです。何台分も連なってラインが動いていくのですが、その工場で生産している車種が受注順に運ばれてくるのに、ロボットはガシガシと溶接していくのです。


すごいですよ。
プログラムで動くのですから、次の車種は何々とデータを入れてやるだけのことではありますが、でもやっぱり、すごいです。これらのロボットが意志を持ったらどうなるんだろうと、ターミネーターを見た人間ならば考えがちな心配をしてしまったり。


その後のラインも全て、車種が入り乱れています。溶接後の部品の取り付けはほとんど人力です。いろんな機械の力を借りながらですが、基本的には人の力で取り付けられていきます。実際の所、ロボットよりもこちらの人の方が驚きなんですけれどね。同じ部品であっても車種ごとに取り付け箇所は違うわけですし、そうした違いを全て把握して、自分のライン上にある時間内に全ての取り付けを終えるのですから、すごいですよ。ただ、見た目の派手さで、ロボットアームのインパクトには敵いませんけれど。


とてもうらやましく思った仕組みがあります。「ポカヨケ」と呼ばれる物で、後工程に不良を回さないための仕組み。ポカを予防する、という意味で、予防のために生産のいろんな場面でいろんな形で存在していると思うのですが、我々一行が説明を受けたのは、組み上げられて納品されたエンジンを、車体に取り付ける前に通る行程でした。ネジの締め付けミスがあったりすると、機械が自動判断してランプが付くとか、そんな内容だったと思います。


曹洞宗の修行の過程では、ミスをすると厳しく叱られて、そして覚えていく流れがあります。事前の説明が一度きりだったりして、むしろミスを誘発させてるんじゃないかと思う場面もあるのですが、理不尽であっても反抗する権利は与えられていません。ただ叱られて、そして覚えていくのです。


それはそれで効果的ではあるのですが、人情としては、トヨタのポカヨケの方がありがたいわけです。何しろ、ミスをしないために手を尽くすのですから。人はミスをする生き物だという当たり前の考えが前提にあるわけですね。ミスの影響を受けるのはお客なんだから、ミスは許されない。だから予防のために手を尽くす、と。


修行道場でもミスを防ぐところに力点を置いてもらえれば、叱られる回数が減ること請け合いなのですが、車と違うのは、ミスをして困るのは本人である、という点です。将来にわたってミスを予防するには、本人が徹底的に体に覚え込ませる必要があるわけで、そのためにはおそらく、叱られるのが手っ取り早いんでしょうね。


今ならそういう考え方も持てますけれど、実際にその場にいるときには、とてもそんな悠長な考え方はしていられません。ポカヨケ、欲しかったです。


図らずも修行時代を思い出させられる研修となりました。工場の見学の後も何カ所が立ち寄ったのですが、長くなったので割愛します。天候に恵まれずに大変な行程ではありましたが、それでもなかなか楽しい研修となりました。来年は座学ですね。どんな勉強が出来るのか、そちらも楽しみです。