書き続ける!住職の平常心日記

静岡県にある曹洞宗のお寺、正太寺の住職が物欲との戦いを公開します。

御本寺様の開山忌

本日、御本寺様の開山忌でした。開山とは、そのお寺の初代住職のことです。正太寺の御本寺は宿蘆寺。浜松の普済寺十三派のそれぞれの派の頂点である門首の一角です。十三門首で一番有名なのは豊川の妙厳寺でしょうか。豊川稲荷のことです。お寺なのですよ。

普済寺の御本寺は熊本の大慈寺。その御本寺は大本山永平寺。案外大本山が近いのですよ。曹洞宗は日本全国に一万五千ヶ寺ほどありますが、辿っていくと案外大本山までの道のりが近いのです。身近なお寺として、大本山にもぜひお参りください。

わたしの修行した大本山總持寺もお忘れなく。

今日の開山忌は、5年ぶりの開催です。コロナ禍のせいで4年ぶり、さらにその前年は台風直撃で中止となっていました。中止とはいえ、開山忌をやらないわけにはいきませんので、御本寺の御住職がご自身でお勤めされたと聞いています。

本来ならば、本寺様の開山忌ですから、末寺が一堂に会して行うものなのです。それを御本寺様に押し付けてしまったような感じもしますが、それも御本寺を守る者の勤めでもありましょうし、感謝をたくさんして、引け目は感じないようにしておきます。

5年が経つうちに、特にどこかの御住職が遷化されたというわけでもないのですが、若手もちょっと増え、私の役どころが変わってきました。今までは主には若手が担当する、裏方を中心とした緊張感を激しく伴って法要を支える役割が多かったのですが、いつの間にか両班になってしまいました。

両班というのは大事な役どころです。法要の中心である導師と、その両側に立つ両班が、法要の主役です。法要開始から終了までずっと表舞台です。立っているだけに見えなくもありませんが、僧侶らしく立っているのがとても大事なしごとです。だらしなく見えたらそれだけで法要は失敗です。立っているだけに見えるその姿で、いかにして法要の厳粛さを表現するかが役割とも言えます。

裏方とは別の緊張感があります。

もっとも、人によっては準備やら何なら複雑な裏方と違って、両班は立っているだけだから楽であると、喜んで引き受けるお方もいるかもしれませんけれどもね。私なんぞは、開山忌のこの場で、両班としてここに立っているに相応しいのかどうかと、考えてしまいましたよ。

私が両班に入ることに決まったのは、法要開始を告げる鐘が鳴ってからでした。両班が整列して上殿(本堂に入る)を始めるタイミングには、私はまだその位置についていませんでした。裏方で若手たちの最終点検を見守っていた時に、両班に立たれるはずと私が思っていた御老僧がふらっとおいでて、「わしは追い出されちゃった」とおっしゃるんです。実際には年齢のことも考慮して、室中という、本堂の中ではありますが、法要の中心とは少し外れて、気分的には参列のお檀家さんと同じぐらいの緊張感で法要を見守っててください、という場所に案内をされたんでしょうけれど。お茶目な方ですので。

でもこの方が抜けたら両班の人数が足りなくなる!と思って急いで本堂の裏手から本堂東側の上殿待機位置に駆けつけたら、「正太寺さん両班ね」と声をかけられた次第。

焦りました。法要の次第を何度も思い出して、特殊な動きはないことを何度も何度も確認して。両班の動きだけを考えたら、他の法要とほとんど何も変わらないのですが、それでも心配で何度も頭の中で確認を繰り返しました。

本堂に入ってからずっとそんなことをしていましたから、とても両班らしく堂々と振る舞えてはおりません。反省することばかりです。難しいな、両班

ちなみにちなみになのですが、我が御本寺様での開山忌は、曹洞宗の行う本来の開山忌の内容ではありません。それを行うには人数がもう少し欲しいので、現状の人数でもできる、ランク付けするとすればワンランク下の法要を行なっています。

本来の形だと、両班の動きも難しくなってきます。一応やり方は知っているものの、今日のように抱擁スタート後に両班になったとすると、動揺がとんでもないことになりそうです。怖い怖い。

正太寺がこうして今も入出の地に立することができているのは、多くの僧侶によって縁が結ばれてきたからです。その中の大きな節目が、正太寺の御開山であり、本寺宿蘆寺の御開山であり、さらにその本寺の・・・というように繋がっています。

お寺を開くというのは、相当な力量と、周囲の支えが必要です。それらを成し得た各寺の御開山様に感謝の気持ちを常に持ちながら、正太寺があってよかったと一人でも多くの方に思ってもらえるように努力を続けることが、御開山様へのご恩返しとなります。果てしない取り組みとなりますが、かんばってまいります。

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