書き続ける!住職の平常心日記

静岡県にある曹洞宗のお寺、正太寺の住職が物欲との戦いを公開します。

西国三十三所巡礼に、さあ出発

朝6時30分。いよいよ出発の時間となりました。実は新居のお寺さんが随行していただけることになっていて、そちらは6時出発になっています。私は朝が早いとかなんとか言える立場にございません。ありがとうございます。

私の持ち物は大量です。ほぼ全員分の御朱印帳。旅のしおり、お経ペーパー。22名分とはいえ、十分な重量感です。それに加えて撮影機材。扱いには気を使います。

全員がバス乗車したところで、旅のしおりとお経ペーパーを配布しました。これで私の席はだいぶ広々。御朱印帳は添乗員さんに全部預けます。

旅のしおりは、説明の間はみなさん開いていてくれましたが、説明が終わるとしまわれてしまいました。確かに言いました。お参りに持って行くにはかさばるので置いていってください、と。でももう少し目を通して欲しかったなぁ。

私のように車内で文字を読むとバス酔いする人もいるんでしょうが、休憩中にも出てくる様子はなかったですね。残念。でも、次回ももらえるのかどうかの問い合わせはありました。それを聞いてもらえただけで嬉しいです。作ります、作りますとも。

さて。お参りです。今日は三ヶ寺回りますが、最初の一ヶ寺は大阪府、残りの二ヶ寺は兵庫県内です。一番の青岸渡寺から回らないのかって?はい、今回は6月催行というのが先に決まってしまったので、アジサイがたくさんあるお寺から回ることにしました。忙しくなりがちな巡礼の旅です。目の保養も大切です。

一ヶ寺目は応頂山勝尾寺。山門から池を橋で渡って緩い上り坂へと続いていく道が見えていたのですが、その先は木で隠れていました。隠れていたそこは、階段。階段。曲がってまた階段。さらに曲がってまた階段。

まさかの階段続きに、しょっぱなからみんな疲れ顔でした。渋滞を迂回して予定よりも時間がかかり、ようやくたどり着いた一ヶ寺目からこれです。古刹揃いの西国三十三所。さすがです。

それでもまだみなさん山門横のお土産やさんにたどり着けば、元気元気。バスに戻り、昼食はサガミ。チェーン店のサガミです。うどんのサガミです。焼き肉もありましたっけ。でも、団体用のお料理があるんですね。お腹いっぱいになってしまいました。

1時間弱の移動をして、次は紫雲山中山寺。こちらはGoogle衛星写真で確認しても、平坦に見えます。実際に行ってみると、勝尾寺とは比べ物にならないほど、平坦でした。階段もありますが、横にちゃんとエスカレーターがあるんです。素晴らしい。正太寺にも欲しい。

勝尾寺と比べると、境内は少し狭いのかな。このあとの時間が押しているのがみなさん分かっているので、他の建物には目もくれず、お参りをしてすぐにバスに向かいます。慌ただしい。

三ヶ寺目は、1時間半ほど移動して、書写山圓教寺。こちらはロープウェーで向かいます。4分ほどの宙ぶらりんの旅の後、入山料500円に追加して500円納めると乗せてもらえるシャトルバスに乗り換え。約1kmの急勾配を数分で駆け抜け、観音様がおまつりされている摩尼殿のすぐ下に到着です。

ガイドブックに載っていた「すぐ下」という表現が引っかかっていたのですが、本当に「下」でした。「前」とかならよかったのですが、「下」でした。

数十段の急な階段が目の前に。これには焦りました。

実は、摩尼殿の下に到着してから、シャトルバスの最終便出発まで、残り20分だったのです。その短い時間で階段を登り、お参りをして、バス発着所まで戻らなくてはなりません。

今回のお参りでは、般若心経、十句観音経三返、観音様の和讃1番、普回向という内容でお勤めしていました。

脳裏にチラリと般若心経を略そうかと浮かび、ボソッと口から出ました。随行してもらっていた隣寺の無量寺さんがすぐさま「ありえん」と小声で返して、お経を始めました。

間に合う確信があったのかどうかはその後聞いていませんが、しかし略すというのは後々心残りとなるのは確実です。私はそのことと、シャトルバスに間に合わなかった場合に、歩きやすいとは思えない道を1kmもみなさんに下っていただくこととを天秤にかけ、結論が出せずにいました。

結果オーライで正しい選択をしてくれた無量寺さんに、感謝。

つまり、シャトルバスに間に合ったのです。ほぼ全員。

間に合わなかったのは3名。納経所で朱印帳の仕上がりを待っていた添乗員さん、ガイドさん、そしてそちらに途中で合流した無量寺さん。

結果として、重い朱印帳を運ぶのを無量寺さんが手伝うことになり、添乗員さんもガイドさんも少しは楽ができたようですが、1kmの下り坂はなかなか大変だったようです。でも、他の皆さんは見れなかった姫路城が、ちらっと見れたそうです。ロープウェーのあたりからは、小高い山が間にあって見えないんですよね。

先にロープウェーで麓まで降りた我々は、近くのお菓子屋さんでお土産を物色しました。お土産やさんからは乗務員さん達に加えて主催者と名乗った私にも差し入れもいただきました。私の分は功労者の無量寺さんへと譲り、一路温泉宿へ。大赤字の旅なので、これぐらいしか出来ないのです。

今晩のお宿は塩田温泉の夢乃井。昔は何件かお宿があったようですが、今は夢乃井さんとあと一軒しかないという話です。どこの温泉場も、厳しい経営環境に置かれているようですね。一部のにぎわっている温泉街は、にぎわっている分だけ競争が激しそうですし。大変です。

実は夢乃井さん。15年前に西国三十三所めぐりを実施した際にも宿泊しています。どんなところだったか記憶になかったのですが、建物の中に入ると、思い出せました。宴会の後にラーメンを食べたと思われるお店も発見し、感慨深いものがありましたね。

とうとう帰ってきたぞ、と。

明日泊まる天橋立ホテルもやはり、その時に宿泊しています。そういう意味でも楽しみです。

夢乃井さん、建物には古さを感じますが、温泉は気持ちが良いですね。食事も美味しかったです。古さを感じるところを徹底して目隠しできれば、もっと良い記憶が残せると思います。従業員の皆さん頑張ってるので、目隠し、お願いします。古いのに古さを感じない宿というのは、そういうところにまで気を遣ってるんじゃないかなぁ。

とはいえ、同じことが正太寺にも言えます。見えるところだけでももう少し手入れができれば、印象が随分と変わると思うんですけれど、毎日そこにいるとなかなか手が入れられないものなのです。事情が分かるだけにね、余計に気になってしまったというのが実際のところでした。

もっとも、これでもし宿代が2万円だったらこんなところで書かずに直接言っていた可能性はあります。自分が一人で泊まるだけならいいですけれど、お客さんを連れてきているのですからね。1万3千円なので納得できるという話です。

逆を言えば、目隠しがうまくできれば2万円でも納得できるということ。もったいないじゃないですか。そこまでのレベルの宿泊ができて、1万3千円で泊まれたとしたら、悪評が出ようもないです。

いいお宿だったので、頑張って欲しいです。正太寺も頑張りますよ。