書き続ける!住職の平常心日記

静岡県にある曹洞宗のお寺、正太寺の住職が物欲との戦いを公開します。

葬儀参列

法類のお寺さんで、寺族さんが亡くなられました。教区が違うため、直接の面識はほぼないものの、法類ですし(本寺が同じ、つまり初代住職である御開山が他の法類のお寺と師弟関係であったり、時の本寺の住職であったりする)、西国三十三所巡り、そして来月から始まる坂東三十三箇所巡りにもそのお寺さんから数名の参加者を得ていますので、せめて葬儀に参列して敬虔な信者を持たれたご遺徳に感謝を示さなくてはなりません。

95歳というご高齢にありながら、直前までお元気にされていたそうです。お名前もよく聞いておりました。現在は親戚筋にあたる和尚さんが兼務されていますが、先代住職が遷化されて以降も精力的に活動され、お檀家さんからの信頼の厚かったことは、今日の葬儀の様子を見ていても伝わってきました。

ただただ敬服する思いです。

そして同時に、正式な跡取りのいない今後が心配になります。兼務されている和尚さんは私もよく知る方ですので、信頼に値する人徳と能力を備えていることに疑いはないのですが、やはりお檀家さんとしては、お寺に常住される和尚さんを望まれることでしょう。しかし、入出と同じように過疎化に向かう地域のお寺です。血縁関係以外で跡取りに入ってくださる方を見つけるのはなかなか難しいことと思います。

現状の日本の大半の寺院は、世襲です。世襲と決められているわけではなく、本来は結婚も許されないので世襲などあり得ないのですが、それが後継者を得る最も確実な方法となってしまっているため、そこから脱することは非常に難しくなっています。純粋に発心して出家し、住職としての資格を得るまでに進むことができる人間だけでは、今日本に存在する寺院を維持するにはさっぱり足りません。世襲制を活用しても足りないんですから。

もしかしたら、教義上世襲を否定しない宗派以外は、ここできっぱりと世襲から離れたりしたら、今まで野に埋もれていた住職候補がキラキラと現れて、跡取り問題をあっという間に解決してくれる、そんな可能性もあるのかもしれません。でも、お寺を極力維持し、お墓を守り続けることが至上命題として存在している今の日本仏教には、そんなリスクは冒せないと思います。

正太寺だって、今の規模だからやっていけるだけで、将来への不安ははっきりとあります。そうした部分の苦悩は、個人事業主の皆さんとさほど変わらないと思います。維持すべき、守るべき建物と墓地があるというのは大きな違いではありますが。人口の多いところへ移転するわけにもいかないので、建物と墓地がメリットなのかデメリットなのか、時代によって変わってくるでしょうね。

それでも私の代のうちは、とことん前を向いて前進します。今回寺族さんが亡くなられたお寺さんにおいても、皆さん協力して、前進して下さるものと信じています。何か助けがいるようでしたら、いくらでもお力添えしますよ。財産的なものでは何らお役に立てませんけれども。

日本中の大半の寺院が、多かれ少なかれ、先を見通せずに悩んでいます。僧侶だから悩みがないなんてことはないのです。人間の身がある以上。人の世で仏の教えを紡ぎ続けるのは、何かにつけて大変なのでございます。