書き続ける!住職の平常心日記

静岡県にある曹洞宗のお寺、正太寺の住職が物欲との戦いを公開します。

娘たちが回復した水曜日

今日は朝から久しぶりに元気な顔を見せてくれた娘たち、一日学校で頑張ってきました。もう安心していいでしょう。自分の体ではないので、やきもきしますね。

私はというと、今日は教区で梅花特派講習会が開かれましたので、そのお手伝いへ行ってきました。年に一度、梅花流ご詠歌の特派師範さんが講習会に巡回してきてくれます。講習会に先立って、開講式をお勤めするので、お手伝いの中心はそちらになります。

今年は熊本地震がまだまだ収束していませんので、物故者供養のための詠讃歌奉詠も行いました。亡くなられた方のご冥福と、遺族へのお悔やみ、そして被災者皆さんが一日も早く穏やかな日常生活を送れますようにとお祈りし、奉詠を行いました。私も久しぶりに梅花譜を見ながらお唱えしましたが、感覚が全然ついていきませんでした。見慣れた五線譜の方がやはり分かりやすいなぁ。梅花譜は、慣れればとても直感的に把握できるんですけどね。

講習会場では、熊本地震の支援金も集めさせていただきました。こちらは宗務所が中心となって行っている活動です。通常の義援金の募集と違いまして、今回の支援金は、熊本県宗務所へお届けすることになっています。

熊本県宗務所では、送られてきた支援金は、管内寺院への支援金として配分するということですので、つまりは被災されたお寺さんへの支援となります。

地方のお寺の経営状態は、大抵が劣悪です。年間の宗教法人収入が、新聞社の社員がもらっていると言われている給料よりも少ないなんてケースは、ざらです。法人収入ですよ。会社でいえば年商です。そこから給料を出して、お寺の維持費などの固定費、毎年どこかしら壊れますから修繕費、事務用品などの消耗品費、などなど、お金のかかるところはいっぱいあります。

他の仕事をされているご住職が多いのは、そういう理由からです。お寺から給料をもらえないんですよ。それなのに24時間いつでも連絡が取れる状態にいなくてはなりませんし、留守にしていればあまり良い捉え方されないですし、ブラック企業もびっくりですよ。それでも住職を務めているのは、そりゃ、仏教をちゃんと伝えたいからです。ですから、菩提寺のご住職が法話をされる際には、心して聞いてください。その瞬間のために、他のすべてを受け入れているんですから。

好きでやっている事だとか、冷たい事言わないで…

正太寺も近年赤字続きです。今年赤字になると、もう余力はありません。給料がもらえなくなります。そんなところまで来ています。

そんな状況のお寺が多いのですが、大震災を受けても特別な支援はありません。会社と同じ扱いです。しょうがないですよね、個人か、そうでないか、で区別されるんですから。

会社ならば、事業が継続できれば収入があります。キャリアもありますから、転職も出来る可能性が残っています。

お寺の場合は、お檀家さんが被災されているのに、修繕のために寄付を募るなんてできません。出来たとしても数年後です。それも、元の地域構成が維持されていればの話で。

でも、住居部分である庫裏は、建物としては立派です。いろんな行事を使う際にはそこが裏方さんの中心部となるため、どうしても大きな建物になります。個人の資金で建てられる規模ではありません。もとより、お寺から給料をもらえていないケースだって多々あるのです。それで住職個人の力でどうやって再建をしたらよいのでしょうか。プレハブ小屋ぐらいなら建てられるかなぁ。どうかなぁ。それだって数百万円かかりますよね、多分。

住職が他の仕事をしていたおかげで貯蓄があったとして、給料をもらっていない法人のために、個人の貯蓄を使って、再建資金を提供する。自分を金銭的には養ってくれないお寺のために、そこまでする。

多分、多くのご住職はそれを厭わずに行いますよ。給料はもらっていなくても、そこで育ったというご住職は多いでしょうから。

地域の皆さんに育てられた、よくしてもらえたのはお寺に生まれたから、そう考えているご住職は大変多いです。普通に考えたら理不尽なことであっても、地域の皆さんへの恩返しのつもりもあって、頑張りますよ。

そうして建てた建物は、境内地であれば通常はお寺の名義となります。住職個人の名義にはしません。その方がお寺のためになるから。そして、そこまでしても、お寺は住職に給料を払えない。

震災前はもらえていても、お檀家さんが被災された場合は布施収入も著しく減少することが考えられます。それはつまり…

ああ、想定して書いているだけなのに、自分の未来を描いているようで辛い。仏教を伝えたいという発心もあるけれど、養うべき家族もいます。妻帯しなければもっと自由に、それこそ収入なんか求めずに活動できるけれど、自分の子を育てなければ跡取りの確保にも不自由する時代では、妻帯は最も現実的な選択肢です。住職がお檀家さんから求められる最たるものは、次代へしっかりとつなぐことですから。

給料たくさんもらえるお寺ならいくらでも後継者候補が近寄ってきますよ。ただそれを理由に寄ってくる候補者が、ふさわしいかどうか、大変疑わしいですが。

長くなりました。最初に何を書こうとしていたのか分からなくなってしまいました。そう、支援金ですね。こういう状況にあるお寺が被災した時、助けになるのはこうして寄らせれる支援金だけなのです。保険だって、地震保険は高額で、入れるお寺は限られます。正太寺も入れていません。熊本の地震でも、多分保険金が下りないお寺がほとんどじゃないでしょうか。

宗務庁が用意した建物共済には加入されているはずですが、あれも確か、全壊で多くて1,500万円ほどだったかな。プレハブの本堂なら建てられますかね。そうか、そうやって一時しのぎのために使うお金なのか、あの共済は。いや、そもそもあれも火災が前提だったような…

そんなわけで、少しでも被災地のお寺の助けになるようにという思いで集める支援金です。今日も大勢の方にご協力をいただきました。ありがとうございます。私のつたない説明でしたが、気持ちは通じたでしょうか。

ここは東海地震を控えた地域です。お互い様の気持ちで出来ることをしながら、一日も早い復興を祈っています。