書き続ける!住職の平常心日記

静岡県にある曹洞宗のお寺、正太寺の住職が物欲との戦いを公開します。

初めてのお役僧

お役僧とは、現実に即して簡単に表現すれば、お葬式の、導師以外の僧侶、となります。業界ではもっと広い範囲で使われる用語ですけれど、世間様の目にこの用語が触れる機会は、お葬式ぐらいなものですね。


お葬式というのは、同じ仏教であっても、お寺によってずいぶんと違います。宗派によって違うのはもちろんのこと、同じ宗派でも地域により寺院により、細かなところに違いが見られます。


お役僧に呼ばれると、その違いを意識しながら、自分の役割を果たしてお勤めをするわけです。これがけっこう難しいことでして。


普段お互いにお役僧を頼み合うようなお寺さんの場合は、お役僧に呼ばれても平常心でいられます。中身が分かっているから。でも、初めてのお寺さんから呼ばれたお役僧の場合は、かなり緊張します。


大筋では同じ内容の式次第。でも、ほんとに細かなところが違うので、初めてのお役僧では、自らの判断で気を利かせるなんて、無理です。何しろ、次に何が起こるのかがそもそも分からないのですから。


見る分には同じように見えても、実際に進行している僧侶からすると、ほんとうに様々に違うのですよ。お唱えするお経が異なることはよくあります。合掌をするタイミング、お唱えのリズム、繰り返しの回数、鳴らし物、お霊供膳の扱い、線香を途中で立てるか立てないか、弔電奉読のタイミングなどなど、チェックポイントは無数にあります。


大きなポイントは事前に教えてもらいますが、細かなところは、そもそも他の地域と違うやり方だと認識されていない事だって珍しくありません。その場その場で、他の和尚さんの動きを察知しながら素早く合わせていくしかありません。


そんな初めてのお役僧に、今日行ってきたのです。だいぶ緊張しました。なんだかノドも痛いし。幸い、他のお役僧さんは知っている顔ばかりでしたので、その点は救われました。いろいろ聞きやすい。これが知らない方ばかりだと、いろいろとハードルが上がります。自分が若い方だと細々としたこともやらなきゃなりませんし。


そんな中、無事に葬儀が終わりました。会葬者からは、初めてとは悟られずにお勤めが出来たと思います。次の機会のために、復習をしっかりしませんとね。